配当利回り3.19%×15年連続減配なし×自己資本比率41.6%で注目されるクボタ。2025年第1四半期は売上高7,126億円(前年同期比8.1%減)、営業利益616億円(同40.2%減)と厳しい結果も、通期配当50円は維持予定。2010年12円から2024年50円への4.17倍配当成長と15年連続減配なしの実績、130年以上にわたる食料・水・環境分野での事業基盤に加え、30年の米国地産地消体制によりトランプ関税への耐性も強固。調整局面を投資機会と捉える高配当投資家には絶好の水準といえるでしょう。最新決算を基に詳しく分析してみました。
クボタの現在の投資魅力度
基本データ(2025年6月22日時点)
- 株価: 1,569円
- 配当利回り: 3.19%(2025年予想50円)
- 配当金: 50円予想(安定配当継続)
- 時価総額: 約1兆8,000億円
- PER: 8.7倍、PBR: 0.75倍
投資家注目ポイント
✅ 世界シェアトップクラスの農業機械メーカー(130年の歴史)
✅ 安定配当政策で長期投資に適している
✅ 配当利回り3.19%の魅力的な収入
✅ 海外売上比率7割超でグローバル展開済み
✅ 30年の米国地産地消体制でトランプ関税への耐性強固
基本情報・プロフィール
企業概要
- 銘柄コード: 6326
- 企業名: 株式会社クボタ(KUBOTA CORPORATION)
- 業種・セクター: 機械(農業機械・建設機械)
- 設立: 1890年2月(創業130年超)
- 従業員数: 約52,608名(連結)
- 上場市場: 東証プライム、日経225構成銘柄
- 決算月: 12月
- 本社所在地: 大阪府大阪市浪速区
事業内容
世界シェアトップクラスの農業機械メーカーとして、稲作・畑作向けの農業機械、建設機械、水・環境関連事業を世界120カ国以上で展開。ダクタイル鉄管、水処理システムなど水インフラ整備にも貢献。
配当関連指標(最重要項目)
配当実績と予想
クボタは2010年から15年連続で減配なしの優秀な実績を誇り、2025年12月期も50円の配当を予想。配当利回りは3.19%、配当性向は25.3%と適正な水準を維持しています。
15年間の配当推移(2010-2025年予想)
配当推移グラフ(2010-2025年予想)
• 配当4.17倍成長(12円→50円、年平均10.3%成長)
• 130年の歴史を持つ世界的優良企業
• 食料・水・環境分野の生活必需インフラ事業
年度 | 配当金 | 配当性向 | 支払総額 | 前年比 |
---|---|---|---|---|
2010年 | 12円 | 39.7% | 178億円 | - |
2015年 | 28円 | - | - | +133% |
2020年 | 36円 | 34.0% | 439億円 | +29% |
2021年 | 42円 | 29.0% | 483億円 | +17% |
2022年 | 44円 | 33.6% | 515億円 | +5% |
2023年 | 48円 | 23.8% | 545億円 | +9% |
2024年 | 50円 | 25.3% | 576億円 | +4% |
2025年予想 | 50円 | - | - | ±0% |
配当成長実績
- 15年間成長率: 2010年12円→2024年50円(4.17倍)
- 年平均成長率: 約10.3%の安定成長
- 減配回数: 0回(15年連続減配なし)
- 増配回数: 13回(2024年、2025年は据え置き)
配当方針・株主還元の詳細
基本方針
当社は安定的な配当の維持及び向上を利益配分に関する基本方針としております。また、内部留保については、健全な経営の維持と将来の経営環境への対応を考慮の上、その使途を決定する方針を採っております。
配当システム
- 配当回数: 中間配当及び期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針
- 決定機関: これらの配当の決定機関は取締役会
- 中間配当制度: 会社法第454条第5項に規定する中間配当を行うことができる旨を定款に定めております
株主還元の中期目標
✅ 総還元性向40%以上を目標とし、50%をめざす
✅ 取得した自己株式については、即消却を継続する
従来実績との整合性
- 15年連続減配なしの実績で株主還元に対する強いコミット
- 配当性向25.3%(2024年実績)から総還元性向50%目標への向上余地
権利確定日・配当支払日
- 中間配当: 6月末
- 期末配当: 12月末
- 年2回の分割払い
財務分析(健全性チェック)
損益計算書の推移
2025年第1四半期実績(2025年1-3月):
- 売上高: 7,126億円(前年同期比8.1%減)
- 営業利益: 616億円(前年同期比40.2%減)
- 四半期利益: 481億円(前年同期比39.2%減)
- 親会社帰属利益: 413億円(前年同期比43.3%減)
2025年12月期通期予想:
- 売上高: 3兆500億円(前期比1.1%増)
- 営業利益: 2,800億円(前期比11.3%減)
- 純利益: 1,960億円(前期比14.9%減)
主要財務指標
指標 | 2025年3月末 | 評価 |
---|---|---|
ROE | 推定9.5% | 良好 |
ROA | 推定4.0% | 良好 |
自己資本比率 | 41.6% | 適正 |
営業利益率 | 約8.6%(Q1実績) | 高水準 |
PER | 8.7倍 | 割安 |
PBR | 0.75倍 | 割安 |
5年間の業績推移
業績推移グラフ(売上高・営業利益・純利益)
• 北米市場でのトラクター需要減と建設機械在庫調整
• 水・環境事業は増収増益(売上9.3%増、利益65.9%増)
• 通期予想は慎重な見通しも配当50円は維持
年度 | 売上高(億円) | 営業利益(億円) | 純利益(億円) |
---|---|---|---|
2020年 | 19,290 | 1,898 | 1,425 |
2021年 | 21,967 | 2,445 | 1,747 |
2022年 | 26,788 | 2,143 | 1,562 |
2023年 | 30,207 | 3,288 | 2,384 |
2024年 | 30,162 | 3,156 | 2,304 |
フリーキャッシュフロー
営業キャッシュフローは安定しており、設備投資や研究開発費に十分な資金を確保しつつ、配当原資も安定的に創出。
事業分析
事業セグメント別売上構成(2024年)
• 建設機械ミニバックホーで世界トップシェア
• 水・環境事業で130年の実績
• 食料・水・環境の生活必需インフラ事業
主力事業の収益構造(2025年第1四半期実績)
1. 機械事業(売上構成約85.6%)
第1四半期実績: 売上高6,099億円(前年同期比10.3%減)、セグメント利益620億円(前年同期比38.0%減)
稲作・畑作向けの農業機械、建設機械、自社の機械に搭載されるエンジンを日本や北米、欧州、アジアで展開。
地域別動向:
- 北米: 建設機械は前年の在庫充足による反動、トラクタはレジデンシャル・農用ともに市場減速
- 欧州: 経済及び投資減速に伴う市場縮小継続、主にトラクタ・エンジンで販売減少
- アジア: タイでは洪水影響で畑作向け低迷も稲作向けは堅調、インドは好調に推移
2. 水・環境事業(売上構成約13.9%)
第1四半期実績: 売上高987億円(前年同期比9.3%増)、セグメント利益149億円(前年同期比65.9%増)
ダクタイル鉄管やバルブ、ポンプ事業、環境プラント事業が好調。増販益や値上げ効果により大幅増益を達成。
- 水道管: ダクタイル鉄管(地震に強い耐震型)
- 水処理システム: 上下水道処理設備
- 環境プラント: 廃棄物処理設備
地域別売上構成
- 北米: 約40%(最大市場)
- 日本: 約25%
- 欧州: 約15%
- アジア: 約20%
2025年度業績予想
- 売上高: 3兆500億円(前期比1.1%増)
- 営業利益: 2,800億円(前期比11.3%減)
- 営業利益率: 9.2%と前期より低下も高水準維持
- 純利益: 1,960億円(前期比14.9%減)
想定為替レート: 1米ドル=145円、1ユーロ=152円
中期経営戦略「GMB2030」
長期ビジョン「GMB2030」では、豊かな社会と自然の循環にコミットする"命を支えるプラットフォーマー"として、食料・水・環境分野で社会課題解決に貢献する計画。
成長戦略の柱
- アジア機械事業の拡大: インド・東南アジアでのシェア拡大
- アフターマーケット事業: 販売後サービス事業の強化
- 水・環境ソリューション: IoT活用によるサービス型事業への転換
- DX推進: 全事業でのデジタル変革
リスク分析
主要リスク要因
- 為替変動リスク: 海外売上比率7割超のため、円高時には業績に大きな影響
- 市場サイクルリスク: 北米市場でのトラクター需要減など、地域別市場動向に業績が左右される
- 気候変動リスク: 農業機械需要への天候影響
- 競合激化: 中国メーカーなどとの価格競争
財務上のリスク
- 有利子負債: 適正水準で財務リスクは限定的
- 為替ヘッジ: 一定程度の為替ヘッジにより変動を抑制
市場リスク
- 景気敏感性: 設備投資サイクルに連動
- 原材料価格変動: 鉄鋼材料価格の影響
トランプ関税影響分析(2025年最新評価)
トランプ関税がクボタに与える影響
2025年1月に就任したトランプ大統領による関税政策が世界経済に大きな影響を与える中、クボタは30年以上にわたる米国地産地消体制により、同業他社と比較して相対的に有利なポジションにあります。
クボタの相対的優位性
1. 確立された地産地消体制
- 製造拠点: 1988年設立のKMA、2005年設立のKIE
- 現地生産比率: 製品の8~9割が北米向けで地産地消を実現
- 研究開発: 2022年に現地R&D拠点を設立し、製品開発も現地化
2. 米国内完結型サプライチェーン
主要製造拠点(ジョージア州):
- KMA: 芝刈機、小型トラクタ、ユーティリティビークル
- KIE: 中型トラクタ、建設機械、作業機器
- 現地調達化: 部品の段階的な現地調達への置き換えを推進
3. トランプ政策との親和性
- 「メイド・イン・USA」方針に合致: 30年前からの米国内生産実績
- 雇用創出: ジョージア州で3,000人以上の従業員を雇用
- 地域経済貢献: 現地サプライヤーとの長期パートナーシップ
懸念される影響要因
1. 専門機関による評価
QUICK企業価値研究所は「販売・業績は回復に向かうと予想。トランプ関税はリスク要因」と位置づけており、完全な影響回避は困難と評価。
2. 部分的な関税影響
- 部品輸入: 完全な現地調達は困難で、一部部品に関税影響
- 製造設備: 機械設備の輸入に関税コスト
- サプライチェーン再構築: 現地調達拡大に伴うコスト
3. 同業他社との比較
建設機械業界への影響例:
- コマツ: 2026年3月期に関税影響で943億円のマイナスを予想
- キャタピラー: 関税政策継続なら2025年売上高が前期比マイナスと予想
クボタへの具体的影響推定
短期影響(1-2年)
- 軽微な影響: 地産地消体制により関税直撃は限定的
- 一部コスト増: 部品・設備輸入で軽微なコスト上昇
- 競争優位: 輸入依存競合他社との差別化要因
中長期効果(3-5年)
- シェア拡大機会: 関税影響を受ける競合他社からのシェア獲得
- 現地調達完成: サプライチェーンのさらなる現地化推進
- 政策優遇: トランプ政権の製造業重視政策による恩恵
関税環境下での戦略的優位性
1. 競合他社との差別化
クボタの優位性:
- 地産地消比率90%超 vs 他社の輸入依存
- 30年の現地基盤 vs 新規現地化組
- 現地R&D体制 vs 本国依存型開発
2. 市場環境の変化対応
- 米国農家の調達方針変化: 関税回避のため現地生産品選好
- ディーラー網の優位性: 30年にわたる現地ディーラーとの信頼関係
- 金融サービス: 自前のファイナンス会社による顧客囲い込み
投資判断への影響
結論:関税懸念は限定的、むしろ競争優位性向上
ポジティブな影響:
- 相対的優位性: 同業他社比で関税影響は軽微
- シェア拡大: 関税影響を受ける競合からの顧客獲得機会
- 政策恩恵: 現地生産企業への優遇措置期待
注意すべき点:
- 完全回避は困難: 一部部品・設備で軽微な影響
- サプライチェーンコスト: 現地調達拡大に伴う一時的コスト
- 市場全体への影響: 関税による米国経済への悪影響
更新された投資戦略
現在株価(1,569円)は、第1四半期業績悪化に加えてトランプ関税懸念も織り込んだ水準ですが、クボタの30年にわたる地産地消体制により関税影響は限定的で、むしろ競合他社との差別化要因となります。
投資判断: 強く買い推奨を維持し、関税懸念による市場の過度な悲観は絶好の投資機会と捉えるべきです。130年企業の危機対応力と、米国市場での競争優位性強化を背景とした中長期的な成長が期待できます。
投資判断:3つの重要ポイントを踏まえた総合評価
重要検討事項1:第1四半期の厳しい業績、回復時期の見極めが重要
現状と原因
- 2025年第1四半期実績: 売上高8.1%減、営業利益40.2%減と大幅悪化
- 主要因: 北米市場でのトラクター需要減、建設機械の在庫調整、欧州市場の低迷
- 対応策: 在庫調整と生産体制の最適化を実施中
業績悪化の詳細な要因分析
1. 北米小型トラクター需要の一巡(最大要因)
コロナ特需の反動
- 背景: 新型コロナ感染拡大で郊外住宅地を中心に個人の「庭いじり」需要が拡大
- ピーク期: 2020年頃からクボタ製小型トラクターの販売が急増
- 現状: 「需要の先食いもあった」ことから2023年から販売減少が継続
- 市場地位: 40馬力以下のコンパクトトラクター市場でシェア40%と北米トップ
影響規模
- 北米市場: 連結売上高の4割を占める最重要市場で1%減収
- 製品特性: 農作業用ではなく、草刈りや軽土木作業など個人用途が中心
- 利益への影響: 製品販売減少が営業利益を260億円押し下げ
2. 欧州市場の継続的低迷
金利上昇による投資抑制
- 主要因: 金利上昇によって農機・建機の買い控えが発生
- 影響範囲: トラクター・エンジンで販売減少、小型ショベルカーなど建機も低迷
- 回復状況: 建機の一部地域で回復兆候があるが全体としては低迷継続
3. 建設機械分野の在庫調整
北米建機市場の明暗
- 悪化要因: 前年の在庫充足による反動で建設機械販売減
- 好調分野: CTL(コンパクト・トラック・ローダー)は堅調維持
- 投資効果: カンザス州新工場での生産体制強化が寄与
4. 地域別業績の詳細動向
アジア市場
- タイ: 洪水影響で畑作向け低迷も稲作向けは堅調
- インド: 好調に推移、長期成長の牽引役として期待
水・環境事業(明るい材料)
- 第1四半期実績: 売上高987億円(前年同期比9.3%増)
- セグメント利益: 149億円(前年同期比65.9%増)の大幅増益
- 要因: ダクタイル鉄管、環境プラント事業の好調、値上げ効果
構造的要因と一時的要因の分析
一時的要因(回復期待あり)
- コロナ特需反動: 需要先食い解消後の正常化過程
- 建機在庫調整: 比較的短期での調整完了見込み
- 欧州金利影響: 金利正常化に伴う投資回復期待
構造的課題(継続監視必要)
- 北米トラクター市場成熟化: 庭いじり需要の持続性に疑問
- 競合環境変化: 中国メーカーとの価格競争激化
- 欧州経済低迷: 投資減速の長期化懸念
投資家への影響
結論:一時的な調整局面だが回復時期の見極めが必要
- 世界的人口増加: 食料需要の構造的増加は継続
- 農業のスマート化: IoT・AI活用ニーズの拡大
- インフラ老朽化: 水道管更新需要の長期継続
- 水・環境事業好調: セグメント利益65.9%増の大幅増益
注意すべき点:
- 回復ペースの不透明性: 北米トラクター市場の底打ち時期
- 競合環境の変化: 中国メーカーとの価格競争激化
- 外部環境の影響: トランプ関税や為替変動による追加影響
重要検討事項2:長期ビジョンは明確だが実行ペースの確認が必要
GMB2030実現に向けた戦略
中期経営計画2025では、GMB2030実現に向けて5年間を土台作りの期間と位置づけ、アジア事業拡大、アフターマーケット強化、DX推進に取り組む
成長ドライバー
- インド市場: 世界最大のトラクタ市場でのシェア拡大
- アフターマーケット: 全世界510万台の稼働機械を活用
- 水環境ソリューション: 機器販売からサービス事業への転換
投資効果の期待と課題
- 新興国成長: アジア市場の拡大による売上増
- 高収益事業: サービス・ソリューション事業への転換
- DX効果: 生産性向上とコスト削減
実行面での課題:
- 市場環境の変化: 外部環境悪化による戦略実行への影響
- 投資タイミング: 業績回復と成長投資のバランス
- 競合対応: 戦略実行中の競合他社との差別化維持
重要検討事項3:魅力的な株主還元政策だが実現時期を慎重に見極め
総還元性向50%目標の魅力と課題
現状の配当政策
- 配当利回り3.19%、配当性向25.3%(2024年実績)
- 15年連続減配なしの優秀な実績
中期目標による還元強化
- 総還元性向40%以上を目標とし、50%をめざす
- 自己株式取得と即消却を継続
- 現在の配当性向25.3%から大幅な還元拡大余地
実現に向けた課題
- 業績回復が前提: 還元拡大には収益基盤の安定化が必要
- 外部環境の影響: トランプ関税や市場動向による業績への影響
- 投資とのバランス: 成長投資と株主還元の適切な配分
バリュエーションの魅力
- PER8.7倍: 一時的業績悪化を織り込んだ割安水準
- PBR0.75倍: 純資産を下回る水準
- 配当+自己株式買いの総還元:50%目標による株主価値向上期待
投資家にとっての意味
- 短期的: 配当利回り3.19%の安定収入
- 中期的: 業績回復後の総還元性向50%達成による還元増加期待
- 長期的: 130年企業の持続的成長による配当成長
高配当投資家向け投資戦略
推奨投資スタイル
慎重な中長期投資アプローチ(5-10年以上)がおすすめ
- 業績回復確認後の安定配当による定期収入確保
- 世界的な食料需要増加による成長期待
- 水インフラ更新需要の長期継続
- 総還元性向50%目標による還元拡大期待(実現時期を見極め)
- 30年の地産地消体制による関税耐性と競争優位性(政策確定後の恩恵)
投資タイミング戦略
慎重な様子見が適切
- 現在水準(1,569円): 配当利回り3.19%と魅力的だが業績回復確認まで様子見
- 投資検討開始水準(1,400円): 配当利回り3.6%(現在から約11%下落)
- 本格投資検討水準(1,250円): 配当利回り4.0%(現在から約20%下落)
様子見期間中の確認事項:
- 第2四半期決算での回復兆候
- 北米トラクター市場の需要動向
- トランプ関税政策の確定と影響度
- 競合他社との相対的ポジション変化
投資金額の目安
段階的エントリーでポートフォリオの3-8%程度を推奨
- 日本を代表する優良企業への将来的な安心投資
- 業績回復確認後の本格投資に向けた準備
- インフラ・農業関連銘柄としての分散効果
- 為替変動を活用した収益機会(タイミング重視)
まとめ:クボタへの総合投資判断
3つの重要ポイントを踏まえた評価
事業基盤:130年の歴史と世界トップクラスの技術力
1890年創業の世界シェアトップクラスの農業機械メーカーとして、建設機械「ミニバックホー」などで世界トップシェア、海外売上高比率は7割超の強固な販売網を誇ります。食料・水・環境という生活必需分野での事業展開により、長期安定性は極めて高い水準です。さらに、30年にわたる米国地産地消体制により、トランプ関税環境下でも競合他社に対する明確な優位性を保持しています。ただし、短期的な業績変動への対応力確認が必要です。
成長戦略:グローバル展開と新分野への挑戦
GMB2030に基づく明確な長期戦略により、新興国市場での成長、アフターマーケット事業の拡大、水環境ソリューション事業への転換を推進。世界的な人口増加と食料需要拡大、インフラ老朽化という長期トレンドを背景とした持続的成長が期待できます。ただし、戦略実行のペースと外部環境の回復タイミングの見極めが重要です。
株主還元:総還元性向50%目標による大幅な還元強化期待
配当利回り3.19%の安定収入に加え、総還元性向50%目標により配当+自己株式買いによる株主還元の大幅拡大が期待できます。現在の配当性向25.3%から約2倍の還元拡大余地があり、PER8.7倍・PBR0.75倍の割安バリュエーションと合わせて、配当収入と値上がり益の両方が期待できます。ただし、業績回復が還元拡大の前提条件となります。
最終投資判断:魅力的な銘柄だが様子見
理由:
- 世界トップクラスの事業基盤と130年の実績 - 長期的な安定性は高評価
- 15年連続減配なし(2010年12円→2024年50円、4.17倍成長) - 配当実績は優秀
- 総還元性向50%目標による大幅な株主還元拡大期待 - 将来性は魅力的
- トランプ関税に対する30年の地産地消体制による競争優位性 - 相対的優位性あり
- 第1四半期大幅調整を受けた超割安バリュエーション(PER8.7倍) - 割安感は十分
ただし、以下の要因により慎重な様子見を推奨:
- 第1四半期の大幅業績悪化(売上高8.1%減、営業利益40.2%減)の継続懸念
- 北米トラクター市場の需要一巡による回復時期の不透明性
- トランプ関税政策の変更可能性と市場環境への影響
- 2025年度業績予想の達成確度を見極める必要性
様子見推奨の主な理由
- 業績回復時期の不透明性: 第1四半期大幅悪化からの回復ペース
- 市場サイクルの底打ち確認: 北米トラクター需要の反転時期
- 関税政策の安定化待ち: トランプ政権の政策方針確定
- 中国メーカー競合激化: 特にアジア市場での価格競争
- 為替変動リスク: 海外売上比率7割超による為替感応度
投資検討時の確認ポイント
業績面:
- 第2四半期決算内容: 回復兆候の有無
- 通期業績予想の修正: 上方修正または下方修正の動向
- 地域別業績動向: 特に北米・アジア市場の回復状況
外部環境:
- トランプ関税政策の確定: 最終的な関税率と適用範囲
- 米国経済指標: 農業・建設投資の回復兆候
- 競合他社動向: 市場シェア変化と価格競争状況
推奨投資プロファイル
現在適している投資家:
- 長期的な企業価値を重視し、短期変動を許容できる投資家
- 配当収入を重視するが、タイミングを慎重に見極めたい投資家
- 食料・水・環境テーマに期待しつつ、業績回復を確認したい投資家
- トランプ関税環境下での競争優位性を評価するが、政策安定化を待ちたい投資家
様子見期間中の注意点:
- 株価水準の確認: さらなる下落リスクと投資機会の見極め
- 四半期決算チェック: 業績回復トレンドの早期察知
- 業界動向の把握: 農機・建機業界全体の回復状況
段階的投資戦略:
- 現在水準(1,569円):魅力的だが業績回復確認まで様子見
- 投資検討水準:1,400円以下(配当利回り3.6%以上)
- 業績回復兆候確認後の押し目買い機会として検討
- さらなる調整時の分散投資エントリーポイント
- 本格投資水準:1,250円以下(配当利回り4.0%以上)
- 130年企業として極めて魅力的な長期投資機会
投資スタンス:
- 様子見期間:2-3四半期程度の業績回復確認
- 投資比率:段階的エントリーでポートフォリオの3-8%
- 投資タイミング: 業績回復確認後の押し目買いを基本戦略
株価水準について: 現在の株価1,569円は、第1四半期の厳しい業績とトランプ関税懸念を適切に織り込んだ水準ですが、130年の歴史を持つ世界的優良企業として中長期的な投資価値は高く評価できます。ただし、業績回復の確認と外部環境の安定化を待って投資判断を行うことが、リスク管理の観点から適切と考えます。
クボタは、短期的な業績変動とトランプ関税懸念を乗り越えて中長期的な成長を実現できる潜在力を有し、総還元性向50%目標による株主還元拡大と地産地消体制による競争優位性強化が期待できる、質の高い高配当成長株候補として、適切なタイミングでの投資を検討すべき銘柄です。
本記事は投資情報の提供を目的としており、投資勧誘ではありません。投資判断は自己責任でお願いします。最新の情報は会社の決算資料等でご確認ください。