**配当利回り4.15%×上場以降減配なし×自己資本比率79.8%**で注目されるあいホールディングス。2025年6月期第3四半期決算は売上高505億5,700万円(前年同期比34.0%増)と大幅に増加し、5月26日には配当予想を上方修正(90円→100円)、M&Aによる積極的な成長戦略を展開するセキュリティ機器の持株会社を、最新決算を基に詳しく分析してみました。
あいホールディングスの現在の投資魅力度
基本データ(2025年6月時点)
- 株価: 2,408円
- 配当利回り: 4.15%(2025年予想100円、5月26日上方修正)
- 配当金: 100円予想(前年90円から10円増配、当初予想から10円増額)
- 時価総額: 約1,257億円
- PER: 6.39倍(EPS376.48円ベース)、PBR: 1.1倍
投資家注目ポイント
✅ 上場以降減配なし(長期的な増配傾向)
✅ 配当利回り4.15%(5月26日上方修正)
✅ **自己資本比率79.8%**の健全な財務基盤
✅ M&Aによる積極的な成長戦略
基本情報・プロフィール
企業概要
- 銘柄コード: 3076
- 企業名: あいホールディングス株式会社(Ai Holdings Co.,Ltd.)
- 業種・セクター: 卸売業(情報機器・通信機器)
- 設立: 持株会社として複数企業の経営統合
- 上場市場: 東証プライム市場
- 決算月: 6月
- グループ構成: 連結子会社23社、非連結子会社4社、持分法適用関連会社2社
事業内容
セキュリティ機器メーカーとして、監視カメラや防犯カメラ等のセキュリティ機器に加え、カード発行機や情報機器等を提供。カッティングマシン等も手がけ、設計事業も展開しています。ドッドウエルBMSとグラフテックが経営統合した持株会社として、グループ全体の経営指導を行っています。
配当関連指標
配当実績と予想
あいホールディングスは上場以降一度も減配しておらず、長期的な増配傾向を継続しています。2021年6月期から2024年6月期までの3年間で年間配当額は「1株あたり45円」から「1株あたり90円」まで2倍に増加。2025年6月期は当初予想90円から100円に上方修正(2025年5月26日)し、10年間で3.3倍の成長を実現する見込みです。
配当推移グラフ(2016-2025年予想)
• 2022年以降の増配加速(60円→100円)
• 年平均成長率約14%の安定成長
• 5月26日に配当予想上方修正(90円→100円)
配当推移(上場以降減配なし)
年度 | 配当金 | 前年比 | 特徴 |
---|---|---|---|
2016年 | 30円 | - | |
2017年 | 36円 | +6円 | +20% |
2018年 | 38円 | +2円 | +5.6% |
2019年 | 40円 | +2円 | +5.3% |
2020年 | 45円 | +5円 | +12.5% |
2021年 | 45円 | 据え置き | 配当維持 |
2022年 | 60円 | +15円 | +33.3% |
2023年 | 80円 | +20円 | +33.3% |
2024年 | 90円 | +10円 | +12.5% |
2025年予想 | 100円 | +10円 | +11.1%(5月上方修正) |
配当方針
変更後の配当方針では、「配当性向50%以上を基準とし、財政状態、利益水準などを総合的に勘案したうえで利益配当を行うことを方針」としており、現在の配当性向は26.6%(100円÷376.48円)と十分な余裕のある水準です。
権利確定日・支払サイクル
- 権利確定日: 6月、12月(年2回配当)
- 配当支払日: 権利確定日から約3ヶ月後
2025年6月配当の重要日程
- 権利付最終日: 2025年6月26日
- 権利落ち日: 2025年6月27日
- 権利確定日: 2025年6月30日
- 予想配当金額: 55円(期末配当)
※6月配当を受け取るためには、2025年6月26日までに株式を購入・保有する必要があります。
財務分析(健全性チェック)
損益計算書の推移
2025年6月期第3四半期決算(累計):
- 売上高: 505億5,700万円(前年同期比+34.0%)
- 営業利益: 73億9,200万円(前年同期比△5.0%)
- 経常利益: 73億4,500万円(前年同期比△57.2%)
- 親会社株主に帰属する四半期純利益: 172億5,900万円(前年同期比+20.5%)
通期業績予想(2025年5月26日修正):
- 売上高: 680億円(前期比+36.5%)
- 営業利益: 105億円(前期比+6.6%)
- 経常利益: 113億円(前期比△43.0%)
- 親会社株主に帰属する当期純利益: 213億円(前期比+35.8%、5月上方修正)
経常利益減少の理由と投資判断への影響
経常利益が前期比△43.0%減少した主要因:
持分法による投資利益の大幅減少
- 前年同期: 持分法による投資利益約90億円(岩崎通信機が持分法適用関連会社)
- 今年同期: 持分法による投資利益約1.5億円(岩崎通信機が連結子会社に変更)
- 減少額: 約88億円の減少
会計処理の変更による影響
- 前年: 岩崎通信機株式取得に伴う負ののれん相当額を営業外収益として計上
- 今年: 2024年9月1日付で連結子会社化により、負ののれん発生益147億円を特別利益として計上
- 結果: 営業外収益は減少するが、特別利益として更に大きな金額を計上
投資判断への影響: この経常利益減少は会計処理上の技術的な要因であり、実質的な事業悪化ではありません。むしろ岩崎通信機の売上・利益が連結に加わることで事業基盤は強化されており、来期以降は同社の収益寄与により経常利益も回復が見込まれます。
業績推移
業績推移グラフ(営業利益・売上高・EPS)
• 負ののれん効果でEPS13.7%向上(331円→376円)
• 6つの事業セグメントによる事業多角化実現
• 情報通信・計測機器事業の新規セグメント追加
年度 | 売上 | 営利 | 経常 | 当期利益 | EPS | ROE | ROA | 営利率 |
2021年 6月 | 462億 | 94.5億 | 98.8億 | 58.6億 | 123.8 | 10.92 | 8.8 | 20.44 |
2022年 6月 | 471億 | 98.5億 | 108億 | 77.4億 | 163.39 | 12.63 | 10.26 | 20.93 |
2023年 6月 | 464億 | 94.3億 | 105億 | 82.4億 | 174.05 | 12.3 | 10.24 | 20.33 |
2024年 6月 | 498億 | 98.5億 | 199億 | 157億 | 331.1 | 19.59 | 16.7 | 19.78 |
2025年 6月予 | 680億 | 105億 | 113億 | 213億 | 376.48 | 20.13 | 16.06 | 15.44 |
主要財務指標
指標 | 2025年6月期第3四半期 | 評価 |
---|---|---|
ROE予想 | 20.13% | 優良水準 |
ROA予想 | 16.06% | 非常に良好 |
自己資本比率 | 79.8% | 健全 |
PER予想 | 6.39倍 | 割安水準 |
PBR | 1.1倍 | 適正水準 |
売上高の推移を見ると、2024年6月期は498億1200万円(+7.36%)、2025年6月期予想は680億円(+36.51%)と大幅な増収が見込まれています。営業利益は2024年6月期98億5300万円(+4.44%)、2025年6月期予想105億円(+6.57%)となっています。
事業分析
主力事業の収益構造
1. セキュリティ機器事業
- 事業内容: 監視カメラや防犯カメラ等のセキュリティ機器
- 市場環境: 2021年は新型コロナ流行により一部で施設投資抑制の動きがみられるものの、需要は堅調。市場は前年比5.3%増の593億円
2. カード機器事業
- 事業内容: カード発行機や情報機器
- 特徴: 病院向け等が好調
3. その他事業
- 事業内容: カッティングマシン等、設計事業
- 展開: アジアも拡大
2025年度業績予想(5月26日修正)
- 売上高: 680億円(前期比+36.5%)
- 営業利益: 105億円(前期比+6.6%)
- 経常利益: 113億円(前期比△43.0%)
- 親会社株主に帰属する当期純利益: 213億円(前期比+35.8%、当初予想から35億円上方修正)
成長戦略
M&Aによる積極的な事業拡大
- 岩崎通信機の完全子会社化(2024年9月1日)
- 株式交換により完全子会社化
- 負ののれん発生益147億3,300万円を計上
- 情報通信・計測機器セグメントを新設
- ナカヨの公開買付けによる子会社化(2025年4月9日)
- 公開買付けにより85.74%の株式を取得
- 2025年6月17日付で完全子会社化予定
- 負ののれん発生益により当期純利益を35億円上方修正
事業シナジー効果
- ビジネスホン事業の強化: 岩崎通信機とナカヨの技術・販売ネットワーク統合
- 開発・生産・販売面での相乗効果: 幅広い技術連携による事業強化
リスク分析
主要リスク要因
- 業界競合激化: ハイクビジョン(中国)が世界シェアNo1の実績があり、国内シェアだけでなく、世界シェアでもNo1
- 技術変化: IPカメラが中心。利便性の高さや低価格化が進み需要が堅調だが、技術革新への対応が必要
- M&A統合リスク: 複数の企業買収による統合効果の実現に時間を要する可能性
財務上のリスク
- 自己資本比率の一時的低下: M&A実行により85.2%→79.8%に低下(ただし依然として健全水準)
- M&A統合リスク: 複数の企業買収による統合効果の実現に時間を要する可能性
- 負ののれん効果の一過性: 特別利益による利益押し上げ効果は一時的
市場リスク
- 景気敏感性: セキュリティ設備投資の景気連動性
- 技術革新対応: AI・IoT技術の進歩への対応力
投資判断:3つの重要ポイントを踏まえた総合評価
重要検討事項1:財務安定性と成長性の両立
現状
- 自己資本比率79.8%の健全な財務基盤(M&A実行により前期85.2%から一時的に低下)
- ROE20.13%、ROA16.06%の高収益体質
- PER6.39倍の割安バリュエーション
投資家への影響
結論: 中小型株として健全な財務安定性と成長性
- 配当持続性の高さ
- M&A投資への十分な財務余力
- 成長投資と配当のバランス
自己資本比率の一時的低下について: 岩崎通信機の連結子会社化等のM&A実行により、前期の85.2%から79.8%に低下しましたが、依然として健全な水準を維持しています。今後のシナジー効果実現により段階的な改善が見込まれます。
重要検討事項2:積極的なM&A戦略
2025年度業績への影響
- 売上高: 680億円(+36.51%)の大幅増収予想
- 統合効果: 岩崎通信機とナカヨの買収効果
中長期成長戦略
- 業界統合: セキュリティ・通信機器業界での地位向上
- シナジー効果: グループ企業間での技術・営業連携
- 市場拡大: 世界のセキュリティカメラ市場規模は2023年に69億5,000万ドルで、2032年までに市場規模は119億ドルに達すると予測
重要検討事項3:魅力的な配当政策
配当の魅力
- 配当利回り4.13%の高水準
- 3期連続増配の実績
- 配当性向27.2%と余裕のある水準
配当成長実績
- 2016年30円→2025年予想100円(3.3倍成長)
- 年平均成長率約**14%**の安定成長
- 上場以降減配なしの安定性
- 2025年5月26日に上方修正(当初90円→100円)
同業他社との比較
企業 | 配当利回り | 増配実績 | 特徴 |
---|---|---|---|
あいHD(3076) | 4.13% | 減配なし | M&A積極化・持株会社 |
セコム(9735) | 1.87% | 安定配当 | 総合セキュリティ大手 |
ALSOK(2331) | 2.68% | 安定配当 | 警備業界大手 |
あいホールディングスは配当利回りと成長性のバランスで優位性を持っています。
高配当投資家向け投資戦略
推奨投資スタイル
**中長期保有(3-5年以上)**がおすすめ
- 上場以降減配なしによる安定インカム確保
- M&A戦略による成長期待
- セキュリティ市場の構造的成長期待
投資タイミング戦略
現在も良好な投資機会
- 現在水準(2,408円): 配当利回り4.15%で十分魅力的(5月上方修正反映)
- 第一買い場(2,273円): 配当利回り4.4%以上(現在から約6%下落)
- 絶好の買い場(2,083円): 配当利回り4.8%以上(現在から約14%下落)
投資金額の目安
ポートフォリオの3-8%程度を推奨
- 高配当による定期収入確保
- 中小型株のリスク分散
- 成長期待とのバランス
まとめ:あいホールディングスへの総合投資判断
3つの重要ポイントを踏まれた評価
財務健全性:中小型株として健全な安定性
自己資本比率79.8%(M&A実行により一時的に低下するも健全水準維持)、ROE20.13%の高収益体質により、上場以降減配なしを支える強固な収益基盤を保持。M&A投資にも十分な財務余力があり、配当持続性は極めて高い水準です。
成長戦略:M&Aによる事業拡大
セキュリティカメラ市場の6.2%成長に加え、岩崎通信機・ナカヨの買収により、2025年度売上高36.5%増の大幅成長を実現。持株会社として明確で実現可能性の高い成長シナリオを描いています。
株主還元:4.15%の魅力的な配当収入
**配当利回り4.15%**は高配当株として魅力的な水準。配当性向26.6%と十分な余裕のある水準で、2025年5月26日に配当予想を上方修正(90円→100円)するなど、積極的な株主還元姿勢を示しています。
最終投資判断:魅力度の高い銘柄
理由:
- 中小型株として稀な財務安定性(自己資本比率85.2%)
- 上場以降減配なしの実績と今後の増配期待
- M&A戦略による明確な成長シナリオ
- 配当利回り4.13%の魅力的な水準
- 割安なバリュエーション(PER5.47倍)
投資時の注意点
- M&A統合効果の実現には時間を要する可能性
- セキュリティ業界の競合激化
- 中小型株特有のボラティリティ
- 技術変化への対応力
- 自己資本比率の一時的低下(M&A影響、今後改善見込み)
推奨投資プロファイル
最適な投資家
- 安定配当を重視する中長期投資家
- M&A成長戦略に期待する投資家
- セキュリティ・IoTテーマに注目する投資家
- 配当利回り4%超の高配当株を求める投資家
段階的投資戦略
- 現在水準(2,408円): 配当利回り4.15%で十分魅力的(5月上方修正反映)
- 狙いたい買い場: 2,273円以下(配当利回り4.4%以上)
- 超魅力的水準: 2,083円以下(配当利回り4.8%以上)
投資スタンス
- 投資期間: 3-5年以上の中長期保有
- 投資比率: ポートフォリオの3-8%
- 投資タイミング: 現在の水準は魅力的な投資機会
株価水準について: 現在の株価2,408円は、2025年5月26日の配当予想上方修正(90円→100円)とM&A効果による成長期待、上場以降減配なしの実績を考慮すると適正な投資機会と判断します。特に負ののれん効果により2025年6月期業績予想も大幅上方修正されており、投資魅力度はさらに高まっています。
あいホールディングスは、安定した財務基盤とM&A戦略による成長を両立できる、質の高い高配当成長株として投資価値が高い銘柄です。
本記事は投資情報の提供を目的としており、投資勧誘ではありません。投資判断は自己責任でお願いします。最新の情報は会社の決算資料等でご確認ください。