配当利回り4.58%×世界シェア1位・2位事業×PER7.6倍の割安水準で注目されるヤマハ発動機。2024年は一時的な業績調整局面にあるものの、3年間で配当2.4倍成長の実績と世界トップクラスの事業競争力を持つグローバル企業を、最新決算を基に詳しく分析してみました。
ヤマハ発動機の現在の投資魅力度
基本データ(2025年6月2日時点)
- 株価: 1,091円
- 配当利回り: 4.58%(2025年予想50円)
- 配当金: 50円予想(年2回:中間25円+期末25円)
- 時価総額: 約1兆1,135億円
- PER: 7.6倍、PBR: 0.95倍
投資家注目ポイント
✅ 配当利回り4.58%(東証プライム平均2.28%の2倍水準)
✅ 3年で配当2.4倍成長の驚異的増配実績(2020年→2023年)
✅ 業績悪化下でも配当維持の安定配当政策
✅ 二輪車世界2位・船外機世界1位の圧倒的競争力
✅ PER7.6倍・PBR0.95倍の極度な割安水準
✅ **自己資本比率41.7%**の健全な財務基盤
基本情報・プロフィール
企業概要
- 銘柄コード: 7272
- 企業名: ヤマハ発動機株式会社
- 業種・セクター: 輸送用機器
- 設立: 1955年
- 従業員数: 約52,000人(連結)
- 上場市場: 東証プライム
- 決算月: 12月
- 本社所在地: 静岡県磐田市
事業内容
二輪車(世界第2位)、船外機(世界第1位)、ロボティクス、金融サービスなど多角的事業を展開。海外売上比率94%の真のグローバル企業として、180以上の国・地域で事業を展開し、100超の海外グループ会社を保有しています。
配当関連指標(最重要項目)
配当実績と予想
ヤマハ発動機は、2020年から2023年にかけて3年間で配当を2.4倍に増加させる驚異的な成長を実現。2024年に株式分割(1:3)を実施したものの、業績悪化下でも配当水準を維持する安定的な配当政策を継続しています。
配当推移(株式分割調整後)
年度 | 配当金 | 前年比 | 配当性向 | 配当利回り |
---|---|---|---|---|
2020年 | 20円※ | - | - | - |
2021年 | 38.3円※ | +91.7% | - | - |
2022年 | 41.7円※ | +8.7% | - | - |
2023年 | 48.3円※ | +16.0% | - | 3.57% |
2024年 | 50円 | +3.5% | 45.4% | 4.61% |
2025年予想 | 50円 | 維持 | 45.4% | 4.58% |
※株式分割(1:3)調整後
株式分割の実施
2024年1月1日を基準日として、1株を3株に分割を実施。これにより投資単位が引き下げられ、より多くの投資家が投資しやすくなりました。
配当方針
- 基本方針: 利益の30%を目安とした株主還元強化
- 配当性向: 45.4%の適正水準
- 安定性: 業績悪化下でも配当水準維持の姿勢
財務分析(健全性チェック)
損益計算書の推移
2024年12月期の連結業績:
- 売上収益: 2兆5,762億円(前期比+6.7%)
- 営業利益: 1,815億円(前期比-25.6%)
- 当期純利益: 1,081億円(前期比-31.8%)
主要財務指標
指標 | 2024年12月期 | 評価 |
---|---|---|
ROE | 12.52% | 優良水準 |
ROA | 4.99% | 良好 |
自己資本比率 | 41.7% | 安全 |
営業利益率 | 7.0% | 一時的低下 |
PER | 7.6倍 | 割安 |
PBR | 0.95倍 | 極度割安 |
2025年業績予想
- 売上収益: 2兆7,000億円(前期比+4.8%)
- 営業利益: 2,300億円(前期比+26.7%)
- 当期純利益: 1,400億円(前期比+29.5%)
2025年Q1実績の課題
- 売上収益:6,259億円(前年同期比-2.5%)
- 営業利益:436億円(前年同期比-44.1%)
- 営業利益率:7.0%(前年同期12.1%)
事業分析
主力事業の収益構造
1. ランドモビリティ(二輪車)- 売上構成約60%
- 世界シェア: 第2位(年間販売台数505万台、ホンダに次ぐ)
- 戦略: プレミアム戦略で新興国での高付加価値モデル展開
- 技術力: レース参戦で培った技術をフィードバック
2. マリン(船外機)- 売上構成約20%
- 世界シェア: 第1位(世界シェア約40%)
- 収益性: 売上20%で営業利益の40%を稼ぐ高収益事業
- 技術優位性: 軽量・高性能・低燃費で世界的評価
3. ロボティクス- 売上構成約4%
- 世界シェア: 表面実装機世界第2位
- 成長性: 2025年Q1は売上+27.3%、生成AI関連需要が拡大
4. 金融サービス- 売上構成約4%
- 事業内容: 二輪車・マリン事業のファイナンス支援
地域別売上構成
- アジア: 39.6%
- 北米: 26.7%
- 欧州: 13.2%
- 日本: 5.9%
- その他: 14.6%
2025年度業績予想
- 回復基調: 営業利益+26.7%の大幅回復予想
- 主要因: ロボティクス事業の急回復、在庫調整の終了
- 課題: 二輪車・マリン事業の需要回復時期
リスク分析
主要リスク要因
短期的リスク
- 業績回復の遅れ: 2025年通期予想未達の可能性
- 主力事業の苦戦: 二輪車・マリン両事業の同時低迷
- 在庫調整問題: 船外機在庫の滞留、電動アシスト自転車の在庫過多
中長期的リスク
- 為替変動影響: 海外売上94%による円高リスク
- 景気敏感性: グローバル景気減速の影響
- 電動化対応: EV化への技術革新コスト
配当関連リスク
- 配当性向上昇: 業績悪化による配当持続性への懸念
- 減配圧力: 通期業績未達時の配当見直し可能性
リスク軽減要素
- 事業多角化: 複数事業による分散効果
- グローバル展開: 地域リスクの分散
- 技術優位性: 世界トップクラスの競争力
- 財務健全性: 適正な自己資本比率41.7%
投資判断:3つの重要ポイントを踏まえた総合評価
重要検討事項1:一時的調整局面での割安投資機会
現状と原因
- PER7.6倍、PBR0.95倍の極度な割安水準
- 主要因:コロナ特需の反動、在庫調整問題
- 2025年Q1も営業利益-44.1%と悪化継続
投資家への影響 結論: 業績回復を見極めてからの投資が適切
- 割安度の魅力: 過去と比較して極度な割安水準だが業績不透明
- 回復期待: 2025年営業利益+26.7%予想も不確実性あり
- 購入分岐点: 配当利回り4.8%〜5.0%到達(1,041円〜1,000円)または次回4半期決算で検討
重要検討事項2:世界トップクラスの事業競争力
競争優位性
- 二輪車: 世界第2位(505万台/年)
- 船外機: 世界第1位(シェア約40%)
- ロボティクス: 表面実装機世界第2位
グローバル基盤
- 180以上の国・地域で事業展開
- 100超の海外グループ会社保有
- 海外売上比率94%の真のグローバル企業
重要検討事項3:魅力的な配当政策と成長実績
配当成長力
- 3年間で配当2.4倍成長(2020年→2023年)
- 年平均成長率35%の驚異的な増配ペース
配当安定性
- 配当利回り4.58%(東証平均の2倍水準)
- 業績悪化下でも配当水準維持
- 配当性向45.4%の適正水準
同業他社との比較
銘柄 | 配当利回り | 主力事業 | PER | 特徴 |
---|---|---|---|---|
ヤマハ発動機(7272) | 4.58% | 二輪車・船外機 | 7.6倍 | 世界1位・2位事業 |
ホンダ(7267) | 4.87% | 四輪車・二輪車 | 24.3倍 | 二輪車世界1位 |
スズキ(7269) | 2.47% | 四輪車・二輪車 | 11倍 | 軽自動車国内1位 |
川崎重工業(7012) | 1.47% | 航空機・二輪車 | 20.8倍 | 重工業複合企業 |
ヤマハ発動機は配当利回りと割安度で同業他社を大きく上回っています。
高配当投資家向け投資戦略
推奨投資スタイル
**中長期保有(3-5年以上)**を前提とした慎重投資
- 業績回復確認後の投資検討
- 配当利回り4.8%〜5.0%到達または次回4半期決算での投資機会
- 世界的競争力による長期成長期待
- 一時的調整リスクを考慮した慎重な投資判断
投資タイミング戦略
購入分岐点の目安
- 現在水準(1,091円): 配当利回り4.58%、様子見水準
- 購入分岐点(1,041円〜1,000円): 配当利回り4.8%〜5.0%到達で投資検討
- 業績回復待ち: 次回の4半期決算まで様子見も有効な選択肢
- 積立投資: 業績変動リスクを分散する定期購入
- 慎重投資: 業績回復確認後の投資検討
投資金額の目安
ポートフォリオの3-7%程度を推奨(慎重配分)
- 景気敏感株特性と業績不透明性を考慮
- 配当利回り4.8%〜5.0%到達または次回4半期決算後の段階的投資
- 他セクターとの組み合わせによるリスク分散
株主優待の魅力
- 対象: 100株以上保有の株主
- 内容: ポイント制による地域名産品、観戦チケット等
- 追加利回り: 優待価値を含めた総合利回り向上
まとめ:ヤマハ発動機への総合投資判断
3つの重要ポイントを踏まえた評価
事業競争力:世界トップクラスだが業績回復は不透明
二輪車世界第2位、船外機世界第1位という圧倒的な競争力は魅力的ですが、2025年Q1の悪化継続により回復時期が不透明です。ロボティクス事業は急回復を見せているものの、主力の二輪車・マリン事業の同時苦戦が長期化する可能性があります。
投資魅力:割安だが業績回復待ちが賢明
PER7.51倍、PBR0.94倍という極度の割安水準は魅力的ですが、2025年Q1の悪化継続により業績回復時期が不透明です。配当利回り4.61%も高水準ですが、4.8%〜5.0%到達(1,041円〜1,000円)または次回4半期決算での業績改善確認まで様子見が賢明と判断します。
配当魅力:高利回りだが慎重な投資判断が必要
配当利回り4.58%は東証平均の2倍水準で魅力的ですが、業績悪化が継続する中での配当維持リスクも考慮が必要です。3年間で配当2.4倍成長という過去の実績は優秀ですが、現在の業績環境では配当利回り4.8%〜5.0%到達または次回4半期決算まで様子見が適切です。
最終投資判断:慎重な様子見を推奨
理由:
- 世界トップクラスの事業競争力は魅力的だが業績回復の不確実性
- 配当利回り4.58%は魅力的だが4.8%〜5.0%到達または次回4半期決算まで様子見が賢明
- 2025年Q1悪化継続により回復時期が不透明
- 主力事業(二輪車・マリン)の同時苦戦が長期化する可能性
- 極度の割安水準だが業績底打ち確認が先決
投資時の注意点
- 業績回復の不確実性(2025年Q1悪化継続)
- 主力事業の課題(二輪車・マリン事業の同時苦戦)
- 景気敏感性(グローバル経済の影響)
- 為替リスク(海外売上94%による円高影響)
推奨投資プロファイル
最適な投資家
- 高配当投資家: 4.58%の高利回りを求める投資家
- バリュー投資家: 極度の割安銘柄を好む投資家
- 長期投資家: 3-5年視点での成長を期待する投資家
- グローバル株投資家: 世界的企業への投資を志向する投資家
段階的投資戦略
- 現在水準(1,091円): 配当利回り4.58%、様子見が適切
- 購入検討水準: 1,041円〜1,000円(配当利回り4.8%〜5.0%到達)
- 現在水準から約4%〜8%の下落で到達可能
- 高配当株として十分魅力的な水準
- 業績回復確認: 次回の4半期決算での業績改善確認後の投資検討
- より積極的投資: 業績底打ち確認後のタイミング
投資スタンス
- 投資期間: 3-5年以上の中長期保有
- 投資比率: ポートフォリオの3-7%(慎重配分)
- 投資タイミング: 配当利回り4.8%〜5.0%到達または次回4半期決算まで様子見推奨
株価水準について: 現在の株価1,091円は一時的な業績調整を織り込んでいるものの、業績回復の不確実性を考慮すると、配当利回り4.8%〜5.0%到達(約1,041円〜1,000円)または次回の4半期決算での業績改善確認まで様子見が適切と判断します。
ヤマハ発動機は、世界トップクラスの競争力を持つ魅力的な企業ですが、現在の業績不透明感を考慮すると、配当利回り4.8%到達まで様子見が賢明な高配当株として評価します。
本記事は投資情報の提供を目的としており、投資勧誘ではありません。投資判断は自己責任でお願いします。最新の情報は会社の決算資料等でご確認ください。